2019年05月05日(日) 19時00分
【ヴィクトリアマイル】新時代の女王へ!フロンテアクイーン 頭のなかは大好きな○○でいっぱい!?
フロンテアクイーンと担当の熊谷博さん
今年の中山牝馬Sで悲願の重賞タイトルを手に入れたフロンテアクイーンが、重賞ウイナーとしてGIに挑みます。レースでは常に一生懸命に走り、どんな舞台でも大崩れはしないものの、“あと1歩”が多かった彼女。普段は大好きな○○で頭がいっぱいだそうで…。
馬名の由来は「最先端+女王」。元号が変わって間もないこのヴィクトリアマイルで、新時代の女王となるのでしょうか。
(取材・文=佐々木祥恵)
馬名の由来は「最先端+女王」。元号が変わって間もないこのヴィクトリアマイルで、新時代の女王となるのでしょうか。
(取材・文=佐々木祥恵)
重賞を勝った馬がつけられる調教ゼッケンをつけさせてあげたい…
父メイショウサムソンという血統背景からも、僚馬アーモンドアイのような派手さは感じさせないものの、デビューからコツコツと実績を積み上げて、6歳にしてついに重賞タイトルを手にしたフロンテアクイーン(牝6・美浦・国枝栄)。ヴィクトリアマイルでGI獲りをもくろむフロンテアクイーンの素顔を探るべく、令和となったばかりの5月1日の午後、国枝厩舎を訪ねた。
フロンテアクイーンは競馬週刊誌及びスポーツ紙用の撮影のため、カメラの前にいた。撮影にも慣れたもので、居並ぶカメラに物見することなくポーズを取る。耳がなかなか前を向かなかったが、それもご愛敬。横馬体の撮影が終わると、今度は顔のアップの撮影に移る。額にはくっきりした星があり、穏やかな顔付きをしている。無事に撮影を終えて馬房に戻ったフロンテアクイーンの前で、担当厩務員の熊谷博さんに話を聞く。
耳はなかなか前を向かないが…落ち着いて撮影に応じる
「(フロンテアクイーンが)2歳で入厩してすぐに担当したのですが、その後、僕が北海道に出張に行ってしまったので、その間は他の人がやっていました」
新潟でのデビュー戦(新馬・7着)は、熊谷さんの手から離れていたという。だが出張から戻ってきてからはずっと、熊谷さんがフロンテアクイーンの面倒を見ている。
「大人しくて可愛かったですけど、まあ普通の女の子でしたね」というのが熊谷さんの第一印象だ。ただこれまでの堅実な成績とは裏腹に、最初の頃はゲート練習で手こずった場面もあったようだ。
「自分は北海道に行ったのでどうなったか気になっていたのですけど、北村(宏)騎手が練習してくれてゲート試験に合格したと聞きました」
2戦目の中山での2歳未勝利戦も7着ののち、舞台を東京に移した未勝利戦で2着に入り、4戦目の暮れの中山の未勝利戦で初勝利を挙げた。
「その頃はまだ走り方がよくわかっていないところもありました、今でも時々カーッとなることもありますけどね。当時は蛯名さんがよく乗ってくれていたのですけど、父のメイショウサムソンよりも母父のサンデーサイレンスっぽいよねと言ってくれたので、その辺から結構いいのかなと思うようになりました」
続く菜の花賞(500万下)は半馬身差の2着と、年明け初戦はまずまずのスタートを切った。
「この時に蛯名さんがクイーンCに使うことを進言してくれたんです」
蛯名騎手の進言通りクイーンCに駒を進めたフロンテアクイーンは、勝てはしなかったものの2着に好走する。
「勝ったのがメジャーエンブレムでしたから仕方ないですね。ただあの2着があったからこそ、今があるのだと思います」
ここで賞金を加算できたことで、春はオークス(GI・6着)にも駒を進められ、秋もクラシック戦線(秋華賞・GI・14着)で戦えたのだった。
4歳春シーズンは福島牝馬S(GIII)2着、ヴィクトリアマイル(GI)8着と重賞路線を歩んだが、その年の9月の秋風S(1600万下)から翌年7月のクイーンS(GIII)まで実に5戦すべて2着と惜しいレースが続いた。
「2着が続いた後に3着だった府中牝馬S(GII)でも勝ったのがディアドラでしたし、負けていても悲観はしていませんでした。背腰が悪いとかトモが弱い、脚元に不安があるというのが競走馬にはよくありますけど、この馬はそういう心配がないんです。丈夫なので体調にもあまり変化がないんですよね。それで安定した成績が残せているのだと思います。ただ何とか重賞を取らせてあげたいとは思っていました。日頃調教に乗ってくれている助手の椎本さんともども、重賞を勝った馬がつけられる馬名入りの調教ゼッケンをつけさせてあげたいと話をしていたんです」
そして今年3月の中山牝馬Sでついに重賞ウイナーとなった。
今年6歳、ついに重賞タイトルを手に(撮影:下野雄規)
「ハナ差だったのでまた2着かなと(笑)。嬉しいというよりホッとしたという感じでした」
熊谷さんと話をしている間、フロンテアクイーンは顔をこちらに伸ばしてきて何やらアピールしている。
「ねえねえ〜」
「多分、青草のことしか考えていないです」と熊谷さんは、フロンテアクイーンの気持ちを代弁した。
「最初はそんなに飼い葉食いが良い方ではなかったですが、今はよく食べるようになりました。青草がものすごく好きで、青草が入っている箱を見ただけで鼻を鳴らしています。あればいくらでも食べちゃいます。頭の中が半分青草なので、牝馬によくあるような焼もちとかはないですね。担当の僕も“青草くれる人”みたいに思っているはずです(笑)」
「あの、熊谷さ〜ん。まだですか?青草」
青草大好きなフロンテアクイーンが次に狙うのはGIタイトル。
「この馬、前に行ってもあまりタレたことがないんですよね。去年のターコイズSも結構いいペースで前めの位置取りで競馬をしていたのですが、4着と粘っていましたしね。一昨年のヴィクトリアマイルは後ろからの競馬で流れが合わなかったのですが、今回はもう少し積極的な競馬をしてほしいですね」
ここでビッグタイトルに手が届けば、たくさんの青草のご褒美が待っているかもしれない。
馬体や歩様などのチェックを終え、大好きな青草をもらってごきげんです♪
国枝先生も目を細め「もう無事是名馬です」
いつも頑張っているフロンテアクイーンについて、国枝先生にもお話を伺いました。
「善戦マン…、いや善戦ウーマンですね。常にいいところに来ているんだけど、タイミングが合いませんでした。元々気持ちが少し安定しないところがあったけど、随分落ち着いてきました。それも重賞勝ちに繋がったのだと思います。
いつも有力馬の1頭ではあるんだけど、相手次第というところもありましたが、この馬と一緒に走っていた馬、特にクラシックを戦ってきた馬が皆いなくなりましたから。もう無事是名馬です。体も衰えていませんし、今充実していますね。ヴィクトリアマイルの後はクイーンS、秋はエリザベス女王杯ということになるのではないかと思います。
中山牝馬Sを勝った時には、ホッとしました。オーナーもずっとこの馬にタイトルを取らせたいという気持ちでいましたので、良かったなと思います。オーナーは初めて持った馬がフロンテアクイーンで、この馬1頭しか持っていません。オーナーの会社の社員総動員で応援しているんです。
相手関係を考えると今年のヴィクトリアマイルは、チャンスはあると思いますよ。これでGIのタイトルが加われば、もう大変なことですね(笑)」
重賞ウイナーの証、馬名入りのゼッケンで調教に出るフロンテアクイーン。次はGI馬のゼッケン…たのしみですね!