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▲シャケトラを担当する上村典久調教助手(左)と辻野泰之調教助手(右)


1年1カ月ぶりのレースながら、AJCCを優勝したシャケトラ。病気のため戸崎圭太騎手から乗り替わりとなった石橋脩騎手は怪我からの復帰明け重賞初制覇、角居勝彦厩舎も再始動後の初勝利と様々な復活が重なった勝利となりました。デビュー前の追い切りから高い能力の片鱗を見せていたシャケトラは、馬房では「偉そうにしている(笑)」といいます。そんな愛すべきキャラクターの素顔とこれからについて角居厩舎の辻野泰之調教助手に伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

あの時は走ることに嫌気が差していたのかも…


――前走のAJCCは長期休養明けでの勝利、おめでとうございます。デビューは3歳の6月でしたが、どこか弱い面があったのでしょうか?

辻野 2歳の時に函館に入って、ゲート試験に受かっていたんですが、2度骨折があってデビューが遅れてしまったんです。函館にいた時から追い切りの動きも良かったので、「間違いなく走るだろう」とみんな言っていたんですけど、そういう事情でちょっと遅れてしまいました。

――デビューこそ遅れましたが、経験馬相手にデビュー勝ちを収めましたね。

辻野 勝てるだろうなって感じはありました。未勝利でウロウロするような馬じゃないって感触はありましたしね。

――次走も昇級初戦ながら3着でした。

辻野 実はその時、ソエが出ていたんです。恐らく、骨がちょっと弱いところがあるんでしょうね。去年も骨折で棒に振っていますから。

――ソエというと、2歳や3歳春に出るイメージでしたが、シャケトラのように3歳夏以降に出る馬もいるんですね。

辻野 馬によって違いますし、古馬になってからも硬い馬場を走った後だと少し響く馬もいるんですよね。大人になってからは直後に響くだけで、何日かすると落ち着く馬が多いです。ただ、この時のシャケトラは若馬に見られる“あのソエ”でした。その次のレースでは順当に勝ちましたし、やっぱり2戦目はソエだったんだなって思います。

――年が明け4歳になると準オープン馬ながら格上挑戦で日経新春杯で2着でした。

辻野 のちのGI馬・ミッキーロケット相手に最後まで食らいついていましたから、その年の飛躍が期待できる競馬だったかなと思います。一旦は前に出たかな、と思ったんですけどね。ミッキーロケットも並ばれると渋太いって話はこの時から聞いていました。

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▲同世代のライバル、ミッキーロケットにハナ差の惜敗(C)netkeiba.com


――次走の日経賞で早々に重賞初制覇を遂げました。

辻野 外々を回って強い競馬を見せてくれました。この時には脚元もだいぶ落ち着いていましたし、不安なく調教も積めていました。

――GI初挑戦となった天皇賞・春は前半で少し行きたがる面を見せてしまいましたね。

辻野 日経賞はスタートで少し遅れたんですけど、田辺騎手が腹をくくって後ろからのレースになったので、自分の力は出し切ってくれたと思います。でも、その後の天皇賞・春は出負けして少し前のポジションを取りに行った分、ちょっと噛んじゃいましたかね。それが最後にも響いてしまったのかな、と・・・

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