哲三の眼

▲福永祐一騎手が東京新聞杯後の最終レースで見せた技術をピックアップ (撮影:下野雄規)


今回取り上げるのは、久々の登場となる福永祐一騎手。悲願のダービージョッキーとなった後も、いちファンとしてその騎乗ぶりを追っていたという哲三氏。注目したのは、インディチャンプで制した東京新聞杯…ではなく、その後にトゥザヴィクトリーの仔・トゥザクラウンで圧勝した最終レースでした。自身も「改めて勉強になった」と語る福永騎手の技術とは?(構成:赤見千尋)

「僕にとっても改めて勉強になったレース」


 先週の(福永)祐一君は日曜日に3勝の固め打ち。結果もしっかり出していたし、乗れていましたね。メインの東京新聞杯は1番人気インディチャンプに騎乗して、間から鮮やかに差し抜けて勝利。もちろんこの騎乗も良かったのですが、さらに僕の好きな勝ち方だったのが最終レース。トゥザクラウンに騎乗して、2番手から後続を突き放す強い競馬を見せてくれました。

 なぜこのレースを取り上げるのかと言えば、僕にとっても改めて勉強になったレースだったから。トゥザクラウンは名牝トゥザヴィクトリーの子供でデビューの時からずっと注目して来ました。能力はあるのに、最後バテるわけではないけれど甘くなって競り負ける…、というレースが多かった印象です。

 でも今回は、スタートを決めて少し離れた2番手を追走、直線は後ろを5馬身突き放しての勝利でした。メンバー的に恵まれたのではないかという意見もあるかもしれませんが、そういうレースは今までにもありました。今回こんなに強い勝ち方が出来たのは、祐一君が作ったレースの形が要因なのではないかと思います。

■2月3日 東京12R(5番:トゥザクラウン)

 というのも、お母さんのトゥザヴィクトリーも、後方から脚を伸ばして来たり、ハナに行ってそのまま押し切るというような形で結果を出していました。僕自身が乗っていないので見た目の印象ですが、道中で一度抜け出す、他の馬と競って抜くと、集中力が途切れてしまうタイプなのではないかと。

 よく直線で先頭に立つと気持ちが切れてソラを使う、というような馬がいますが、その場面だけに要因があるのではなく、もっと前にポイントがあると僕は思っているんです。一概には言えませんが、例えば道中で真剣に他馬と競って抜いた、だからもう一度踏ん張るということがなかなか出来ない、集中力が続かないというのは、人間に置き換えるととてもよく理解できるし、僕自身もそういうタイプです。

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▲01年にエ女王杯(GI)を制したトゥザヴィクトリー (c)netkeiba.com


 話をトゥザクラウンに戻すと、ゲートを出負けしたり、五分に切れなかったりして後ろからになる→スピードがあるから上がって行く→隣の馬を交わしたら、やり切った感が出てしまうのではないか。だから最後に甘くなる、というふうに感じました。

 今回の祐一君は、スタートをしっかり決めて、他に行く馬がいたので少し離れた2番手から追走。道中で他の馬を抜くことのない形を作り上げました。そうしたらぶっちぎって勝ってしまう。重賞でも特別戦でもないけれど、馬の性格を考え、馬の気持ちと騎手のコントロール性が合えば、馬は一変するのだということを改めて勉強できたレースでした。

 祐一君は常に騎乗に対して研究していて、とても努力していると思います。こういう勝ち方が出来るのはさすがだし、先週の競馬は特に、これまでとはまた違ったポイントが見えたので、いちファンとしてこれからもじっくりと見ていきたいと思っています。

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▲「こういう勝ち方が出来るのはさすが。いちファンとしてこれからも見ていきたい」(撮影:下野雄規)


今週の注目コンビ


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▲今回がコンビ4戦目となるタイムフライヤー&和田竜二騎手(写真奥の緑帽、撮影:下野雄規)


 今週の注目騎手はタイムフライヤーに騎乗する和田(竜二)騎手です。

 斤量55kgでの出走、有利な状況でタイムフライヤーの“やる気スイッチ”が入る事に期待したいです。

(文中敬称略)