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▲27歳の若さ豪でリーディングに輝いたブレントン・アブドゥラ騎手とはどんな人物なのでしょうか!?


今年の夏に初来日した、ブレントン・アブドゥラ騎手。小倉開催で14勝を挙げる活躍ぶりに、印象に残っているファンの方は多いのではないでしょうか。普段はオーストラリアを拠点としている27歳。今年は、H.ボウマンらベテラン勢を抑えリーディングにも輝きました。今回の短期免許は12/8〜12/23で、最終日の有馬記念ではサトノダイヤモンドのラストランに騎乗。豪若手NO.1ジョッキーの素顔に迫ります。

(取材・文=不破由妃子)


夏の小倉では、開催リーディング3位に


──今年の夏に初めて短期免許を取得され、小倉で5週間騎乗されたわけですが、まずは来日に至るまでの経緯を教えてください。

アヴドゥラ シドニーでリーディングジョッキーになり、大きいレース(ゴールデンスリッパーS)も勝てたことで次の目標を模索し始めたのですが、そのときに、大きいレースも多く、競馬人気の高い日本で乗ってみたいと思ったことがきっかけです。

──ボウマン騎手からもアドバイスがあったそうですね。

アヴドゥラ はい。6月の頭くらいにボウマンから電話があって、次のステップとして日本で騎乗することを強く勧められました。どういう乗り方が日本の競馬に合うのかなど、具体的なアドバイスももらったりして。

──それまで日本の競走馬についてはどういうイメージを持っていましたか?

アヴドゥラ 世界中の国際レースで走っていますし、非常にレベルが高いという印象がありました。もともと日本の競馬を観ることが好きで、オーストラリアでもよく観ていたんです。

 競馬専用のチャンネルもあって、そこで社台スタリオンステーションのドキュメンタリーを観たのですが、すっかりディープインパクト(池江泰郎厩舎)のファンに(笑)。だからこの夏、(息子である)池江泰寿厩舎(初来日時の身元引受調教師。今回の身元引受調教師は尾関知人師)の馬に乗れたことがすごくうれしかったです。

──この夏の小倉では、74鞍に騎乗して14勝。開催リーディングでも3位という好成績を収められたわけですが、日本の競馬について率直な感想は?

アヴドゥラ オーストラリアの競馬は、接触したりなど荒い競馬になりがちなんですが、日本は全然そういうのがなくて、お互いが敬意を持ってスペースを共有し合っているような印象を受けましたね。だから、レース自体を楽しむことができました。

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▲▼日本初騎乗の日のメインを、エントリーチケットで勝利 (C)netkeiba.com


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──騎乗初日のメインレースで初勝利(8月4日、九州スポーツ杯、芝1200m、エントリーチケット)。コースや馬場やペースなど、本国との違いに戸惑うことはありませんでしたか?

アヴドゥラ オーストラリアには、1000mや1200mといった短い距離のレースがすごく多いので、これまでの経験が生かせたかなと思います。

──オーストラリアにも小倉競馬場に匹敵するような小回りの競馬場があるのですか?

アヴドゥラ ありますよ。カンタベリーパーク競馬場は、1周距離が約1500mで、直線距離も300mくらい。ものすごく大きな競馬場からカンタベリーのようなコンパクトな競馬場まで、オーストラリアはバリエーションが豊かですからね。

──74戦14勝という成績は、どう受け止めていらっしゃいますか?

アヴドゥラ 初めての騎乗で、しかも5週間しかなかったのに、14勝もできるなんて思いませんでした。これには自分でもちょっと驚きです。

──とくに印象に残った馬はいますか?

アヴドゥラ 最後に勝ったサトノグロワールはよく覚えています(9月2日、3歳500万下、芝2600m)。今後、いい中長距離馬に育っていくだろうなと感じました。あとはやっぱりエントリーチケット。すごく頑張ってくれて、2つ(九州スポーツ杯と北九州短距離S)も勝つことができましたからね。

──5週間と短い期間ではありましたが、仲良くなったジョッキーはいますか?

アヴドゥラ リュージ(和田竜二騎手)にはすごく助けられました。言葉がわからないなかでも、調整ルームで一緒に楽しく晩ご飯を食べたり。同世代では、タカ(藤懸貴志騎手)やコーヘイ(松山弘平騎手)と仲良くなりました。

「腕っぷしの強さが僕のストロングポイントです」


──今回、期間を空けずに二度目の来日となりましたが、目標はありますか?

アヴドゥラ 今回の滞在中は6日しか開催がないので、夏ほどには勝てないかもしれませんが、ひとつでも多く勝てるように頑張って取り組みたいです。そのためには、ひとつひとつの騎乗を大切にすること、そしてそれを継続して勝ちにつなげていくこと。それが第一の目標ですね。

──有馬記念では、ラストランとなるサトノダイヤモンドに騎乗することが決定しました。サトノダイヤモンドについてはどんなイメージを持っていますか?

アヴドゥラ 2年前に有馬記念を勝っている馬ですし、強い馬であることは間違いないと思っています。この秋も京都大賞典を勝っていて、前走のジャパンCも2番人気。結果(6着)は残念ではありましたが、有馬記念という大きいレースを勝てる可能性のある馬に騎乗できるわけですから、今からすごく楽しみです。

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▲2016年の有馬記念を勝っているサトノダイヤモンド、当時の騎乗はC.ルメール騎手 (撮影:下野雄規)


──オーストラリアの若手No.1ジョッキーとして、今後のビジョンを教えてください。

アヴドゥラ ボウマンやマカヴォイといったベテランが活躍しているなかで、今年リーディングを獲れたことはすごくうれしいですし、これからはもっと視野を広げて、世界中で乗ることが目標です。今回の日本での騎乗もそのひとつですが、いつかは世界各国で乗れるよう、そしてそうあり続けられるように努力をしていきたいです。

──日本からも昨年は小崎綾也騎手が、今年は坂井瑠星騎手が、長期にわたってオーストラリアで騎乗しました。彼らの取り組みついてはどう思われますか?

アヴドゥラ リョウヤ(小崎綾也騎手)はクリス・ウォーラーのところにいたジョッキーですよね? 彼とは向こうで会いましたよ。たしか競馬のなかで助けたこともあったような…(笑)。僕自身にも言えることですが、海外で経験を積むというのは、非常に素晴らしい取り組みだと思っています。レースの違いを身を持って感じることで、確実に引き出しが増えますからね。今後の騎手人生に大きなプラスになりますし、今後も続けていくべきだと思います。

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▲「海外で経験を積むというのは、非常に素晴らしい取り組みだと思っています」


──ちなみに今回の来日にあたり、仕事以外で楽しみにしていることはありますか?

アヴドゥラ 実は僕、先週の日曜日に結婚式を挙げたばかりで、今度の日曜日に妻が来日するんです。なので、妻と一緒にぜひ東京観光をしたいと思っています。どこに行くかは……これからいろんな人に話を聞いて、オススメのスポットをリサーチしたいです(笑)。

──最後に、日本の競馬ファンに向けて、アヴドゥラ騎手の見どころを教えてください。

アヴドゥラ 腕っぷしの強さが僕のストロングポイントです。オーストラリアでも評価してもらっているので、そこはぜひ見てほしいです。今回も限界まで目いっぱい追って、ひとつでも多くの勝利を手にしたいと思っています。

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