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▲イギリスのTOP3、ゴドルフィンの主戦も務めるウィリアム・ビュイック騎手 (C)netkeiba.com


マイルCSをステルヴィオで制したウィリアム・ビュイック騎手。念願の日本のGIタイトルを手にしました。ノルウェー出身の30歳で、本拠地はイギリス。ランフランコ・デットーリ騎手、ライアン・ムーア騎手と並んでTOP3と呼ばれ、ジェームス・ドイル騎手と共にゴドルフィンの主戦として世界中のビッグレースで活躍しています。今回が7カ国目のGI制覇。世界をまたにかける名手の素顔に迫ります。

(取材・文:編集部)


ステルヴィオは海外に出ても十分に戦えるポテンシャル


――マイルCS優勝おめでとうございます。JRAのGI初勝利となりました。

ビュイック ありがとうございます。ずっと日本でGIタイトルを取りたいと思っていたので、僕の騎手人生においても特別な瞬間になりました。

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▲ペルシアンナイトをアタマ差凌いで勝利 (C)netkeiba.com


――レースのことからお聞きしたいのですが、ステルヴィオとの初コンタクトは最終追い切り。どんな可能性を感じましたか?

ビュイック 追い切りで跨った時点で「完璧に仕上がっているな」と感じました。実際その通りで、最後の直線で僕が追い出した時には飛んでいくんじゃないかと思うくらい勢い伸びてくれたので、これなら本番でも期待できると思いました。

――かなりの期待を持ってレースを迎えられたんですね。

ビュイック 枠順も、幸運にも1枠1番だったので、スタートを上手く切れれば中団よりも前で流れに乗る、そうでなければステルヴィオの末脚を生かす競馬をイメージしていました。木村調教師が僕を信じてくれ、スタート後は僕の感覚に任せると言ってくださったので、その期待に応えたいと思い、スタートは特に集中しようと思っていました。

――このレースでライバルと考えていた馬はいますか?

ビュイック 人気馬のアルアイン、アエロリット、モズアスコットが強いのは良く分かっていたので警戒していましたが、特に去年の優勝馬であるペルシアンナイトは1番のライバルだと思っていました。

――レースを振り返って。スタートをきっちり決めて、先団の内にポジションを取りました。想定通りだったところ、逆に予想外だったところもあれば教えてください。

ビュイック スタート後に少しズブさを出すかもしれないとの話を聞いていましたが、木村調教師をはじめとする厩舎の皆さんがその癖を直すトレーニングを十分に行ってくれていたので、その様な面は全く見せず、スムーズな走りをしてくれました。そういう点では、好スタートと前半の位置取りがいい意味で予想外だったかもしれません。

 あとはすべてうまく噛みあって最高のレースと最高の結果を出すことができたと思っています。

――管理する木村哲也調教師にとっては、開業8年目での初GI勝利。木村調教師の喜びも伝わってきました。

ビュイック レース直後は私を含め、皆とにかく興奮していましたので、会話にならないぐらい喜び合いました。その後、落ち着いてからレース映像を振り返り、お互いの仕事ぶりを称え合いました。

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▲お互いの仕事ぶりを称え合ったというビュイック騎手と木村哲也調教師 (C)netkeiba.com


――この勝利ではビュイック騎手ご自身のことも、日本の競馬ファンに鮮烈に印象づいたと思います。

ビュイック これまでも日本で重賞は勝たせてもらっていましたが、これで日本のファンや関係者の方々に、「W.ビュイック」という騎手を認めてもらえるのではないか、今はそんな風に思っています。

――そして、勝ったステルヴィオは3歳。これからの将来性はどう感じていますか?

ビュイック ステルヴィオは本当に素直で、賢く、そして勇敢な馬です。まだまだ可能性を秘めていると思いますので、このGI勝利は馬にとっても新しいキャリアの始まりとなるはずです。将来的には距離が伸びても十分に戦えるだけの成長力や対応力があると思いますし、海外に出ても十分に戦えるポテンシャルがあると思います。

「競馬への理解」「熱心な応援」日本の競馬ファンの姿に感動


――ご自身のこともお聞きしたいのですが、今回は2014年以来4年ぶりの来日。日本の競馬に何か変化は感じますか?

ビュイック 基本的なところで言うとルールがいくつか変更されましたね。より国際基準に近づいたと思います。馬に関しては、以前も今も日本には本当に強い馬が揃っていますね。総じてレベルが高いと思います。

――日本で騎乗する上で、心がけていることはありますか?

ビュイック とにかく「勝ち」にこだわることです。重賞はもちろんですが、午前中の未勝利でもすごくたくさんのファンの方がいるので、乗っていて楽しいですし、常に勝ちたいと思っています。そのために自分の身体の状態を整えることに集中していますし、乗る馬の情報は事前に全て確認し作戦を練っています。

――ということは、日本でもトレーニングはかかさずに?

ビュイック はい。トレーニングジムへ行ったり、ホットヨガに行くことは多いです。イギリスにいても日本にいても、自分のルーティーンは崩さないようにしています。プロとして体重のコントロールはもちろん、体調を整えることに集中しています。

――普段はイギリスを拠点に活躍されています。ランフランコ・デットーリ騎手、ライアン・ムーア騎手と並んでTOP3というご活躍。

ビュイック ロンジンワールドベストジョッキーでは来日前は5位でしたが、今回のマイルCSを勝てたので3位まで順位が上がったかもしれません(※取材時点)。今年はイギリスダービーを勝つことができて大きな夢が一つ叶った上に、日本でもGIを勝つことができて本当にいいシーズンを送れています。

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▲英ダービーと日本のGIも勝利「本当にいいシーズンを送れています」 (C)netkeiba.com


――今回の短期免許は朝日杯FSの週までですが、楽しみにしている馬はいますか?

ビュイック まだどんな馬に乗るか決まっていないところもあるのですが、たくさんの馬主さんや調教師の方が私を必要とし支えてくれているので、全力でその期待に応えたいと思います。

――最後に、日本のファンへメッセージをお願いいたします。

ビュイック たくさんの声援をありがとうございます。日本のファンの皆様は競馬というスポーツをとてもよく理解してくれていて熱心に応援してくださる姿に感動しました。これからも応援してください。

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