哲三の眼

▲グローリーヴェイズが重賞初制覇! M.デムーロ騎手は日経新春杯連覇達成(C)netkeiba.com


今回はM.デムーロ騎手が4歳馬のグローリーヴェイズを初の重賞制覇に導いた日経新春杯から。先週に注目コンビとして挙げていたルックトゥワイス&岩田康誠騎手も2着に食い込む活躍を見せ、哲三氏は「思い描いていた通りの競馬だった」とその騎乗ぶりを絶賛。また正反対なアプローチから1,2着となった両コンビをサンプルに、哲三氏が使う「臨機応変」という言葉の本質を明かします。この他、阪神JFの際に当連載で“愛のムチ”を送った北村友一騎手の好騎乗も紹介!(構成:赤見千尋)

上位2騎手の「臨機応変」と「軸ある騎乗」


 今週は日経新春杯について振り返ります。先週のコラムで注目コンビとして挙げていたルックトゥワイス&岩田(康誠)君は、最後によく伸びて2着に食い込みました。岩田君らしい騎乗で、「こう乗ってくれたらいいな」と思い描いていた通りの競馬でした。

 今の京都は極端な馬場傾向があります。いつも僕は“いかに馬を効率よく走らせるかが大事”という話をしていますが、もちろんそれだけではダメで、こういう極端な馬場の時にはそれに合わせた臨機応変さが必要です。

■1月13日 日経新春杯(2番:グローリーヴェイズ)

 今の京都の芝、特に外回りに関して言えば、最内をすくうか、外に持ち出して行くかの2択。ただし、伸びやすい馬場は本当に狭い範囲ですから、最内でないならば“極力内に入れ過ぎず”、外に持ち出すと言っても“大外を回り過ぎず”、ということになります。

 勝ったミルコは1枠2番。好枠を活かして、いつも通りミルコらしいさばきで内をすくって勝ちました。岩田君の場合は5枠10番と中枠だったし、真ん中を突いて来るというよりは、外からしっかり脚を伸ばすという競馬で、今の馬場傾向をしっかり把握していた。

 このレースだけではなくて、芝でもダートでも、今の馬場にどう乗れば合うのかという部分をしっかりと考えて乗っているように見えました。“臨機応変”という言葉の中には、いろいろな臨機応変があると思うんです。馬を中心に考えた中での臨機応変だったり、馬場を考慮した臨機応変だったり。僕はある程度「こう乗るんだ」という軸がある中での臨機応変を見るのがすごく楽しいんです。

 だから先週の日曜日はすごく競馬が面白くて。日経新春杯はGIに匹敵するくらい面白かったし、他のレースでも岩田君をはじめ、軸がある中での臨機応変さを見せてくれたジョッキーがたくさんいました。

北村友一騎手、絶好調の理由


 例を挙げると、今絶好調の北村友一君。内枠だったら、絶対に内を狙って行くレースをしている。土曜日の10R、5番人気のシャンティローザで勝ち切ったのですが、1枠1番で内ラチ沿いを進んでいました。当然と思うかもしれませんが、途中で内を捌くのが怖くなって外に出そうとする人もたくさんいます。もちろんそれがダメなわけではないけれど、今の京都の馬場で考えると途中で外に出すのはもったいないなと。

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▲絶好調の北村友一騎手も“軸がある中での臨機応変さ”を見せている(C)netkeiba.com


 これは結果が良かったレースですが、同じ土曜日の最終レースの馬にも注目していました。6番人気で結果的に7着でしたが、この時も内にこだわった競馬をしていた。ただ、1枠1番からのポジショニングと、4枠4番からのポジショニングでは、同じように内を取るには4番の方がどうしても下がってしまいます。

 このレースでも勝った時のレースよりも後ろのポジショニングになっていました。その後ろになったことを良しとするか、それは後ろ過ぎるだろということで内にこだわらない選択をするのか、というところもポイントなのですが、僕は例えば「今の馬場ならばこう乗らないと勝てない」、という軸があることも大事だと思っています。

 同じような乗り方をしているけど、位置取りが悪くなったのは枠順の影響が大きく、これが1番なら勝っていたのではないかなと。タラレバですが、そういう風に思わせてくれる騎乗でした。中枠、外枠からではまた違った乗り方が見られましたし、いろいろ想像を掻き立ててくれるレースが見られて面白かったです。

 どこを通っても一緒という馬場の時は、そういうこだわりは必要ないのですが、今の京都のように馬場に特徴がある時は、その特徴に合わせたポジショニングにこだわれる騎手の方が結果が出やすいと思います。

 若手のジョッキーに注目してみると、一概には言えませんが、馬場傾向なのか馬の特徴なのかというところでしっかり合わせ切れていなくて、どちらか寄りになってしまいがちなことが多いように見えました。そういう部分はまた別の機会にお伝え出来たらと思っています。

今週の注目コンビ


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▲勢いが止まらない明け4歳世代、菊花賞馬が始動!(C)netkeiba.com


 今週の注目コンビはフィエールマン&クリストフ(ルメール)。僕はフィエールマンの走り方が好きなのですが、クリストフがそれをどう捉えて(レースを)仕上げてくるのかとても楽しみにしています。

(文中敬称略)