2019年01月20日(日) 19時00分
【渡辺薫彦調教師】ヴァルディゼールでシンザン記念勝利 厩舎初重賞に騎手時代の恩師も祝福
▲ジョッキー時代は「ナベちゃん」の愛称で多くのファンに親しまれた渡辺薫彦調教師 (撮影:大恵陽子)
「今週のFace」はシンザン記念をヴァルディゼールで勝利し、重賞初制覇を遂げた渡辺薫彦調教師。ジョッキー時代はナリタトップロードとのコンビで人気を博し、「ナベちゃん」の愛称で多くのファンに親しまれました。今回は、ナリタトップロードでの菊花賞制覇後にあった「胴上げ騒動」から「○○なタイプ」というヴァルディゼールの今後まで、netkeiba読者のみなさんへ語っていただきました。
(取材・文:大恵陽子)
(取材・文:大恵陽子)
ロードカナロア産駒あるある!?
――重賞初制覇、おめでとうございます!
渡辺 ありがとうございます。やっぱり重賞は格別ですね。ドラゴンバローズでシリウスSをクビ差2着など惜しいレースもこれまでにあって、もう少しで重賞に手が届くところまできていたので、嬉しかったです。
――記念の勝利ということもあり、多くの祝福の声が寄せられたんじゃないですか?
渡辺 ありがたかったです。これだけ応援してもらっているんだって改めて感じました。検量室前でもそうですけど、LINEやメールなど200件くらいいただいて。沖芳夫先生(騎手時代に所属)からもすぐにお電話をいただいて、「よかったな」って言っていただきました。先生も今年の2月で定年ですね。
▲鞍上は年明けから絶好調の北村友一騎手 (C)netkeiba.com
▲厩舎初重賞の記念の口取り写真 (C)netkeiba.com
――ヴァルディゼールですが、デビュー前はどんな馬でしたか?
渡辺 2歳の夏に入厩したのですが、1歳で初めて見た時から小柄な印象でした。牧場時代からトレッドミルに入るのがちょっと苦手だったみたいで、トレセンでのゲート試験も少し苦労したのですが、2〜3週間くらいでパスしました。
すごくゆったりして大人しい馬で、ゲート練習でも「え、入るの〜?」って感じでした(苦笑)。ゲート試験に受かった後は、小柄なこともあって成長を促す意味でも一度放牧に出しました。
――放牧から帰ってきて、新馬戦に向けての調教はいかがでしたか?
渡辺 調教を重ねるうちにだんだんピリピリしてきました。でも、調教ではフワフワするところがあるんです。直前の追い切りは僕が乗って、そんなにやるつもりはなかったんですが、フワフワするから気を抜かせないようにって乗っていたら、思ったよりも時計が出てしまいました。
――調教ではそんな感じだったんですね。それでも、新馬戦は4〜5番手から直線ではシュッとスピードに乗って勝利しましたね。
渡辺 そうなんですよ。すごく実戦タイプなのかもしれません。実はシンザン記念の前もそんな感じでした。大晦日に僕が調教に乗って坂路で54.2秒を出していたので、年明けに(北村)友一に乗ってもらった時は「軽くでいいよ」って指示だったんです。でも、友一も同じ感覚だったみたいで、「不安だからちょっとやっておきました」って、いい時計が出たんです。
調教を見ている人たちからは「いい動きをする」って言っていただくんですが、乗っていると意外とスピードを感じないんですよ。他厩舎でロードカナロア産駒の調教に乗っている助手さんと話をする機会があったんですが、その方も「そういうところがあります」って話していました。
――では、シンザン記念前の自信度といいますと?
渡辺 正直なところ、半信半疑でした。でも、調教時計が出ているから人気はするだろうなぁと思っていました。
――スタートも出て、中盤はやや行きたがる素振りも見せましたが、すぐに折り合いがつきました。外回りコースから直線に向くと、スッとインコースを取りに行きましたね。
渡辺 新馬戦の時からなんですが、仕掛けてからすぐ反応するわけではなくて、2〜3完歩はスッと動かないとジョッキーも言っていました。その辺を含めてちょっと子供っぽいのかな、と思います。あそこでスッと反応できるようになったらもっといいでしょうね。その分、伸びしろがあります。
――ゴール前は外からマイネルフラップが来るともうひと伸びしました。
ムチを外から叩いているけど、意識的に併せに行ったのはあると思います。幼い面がある分、ちょうど突かれるような形になったのもよかったと思います。
▲まだ幼さも残るヴァルディゼール、それだけに伸びしろにも期待 (撮影:大恵陽子)
渡辺厩舎は4割以上が“京都”での勝利
――京都競馬場といえば、渡辺調教師が騎手時代に重賞初制覇を果たしたのがきさらぎ賞(ナリタトップロード)ですし、GI初制覇もナリタトップロードで菊花賞でした。菊花賞で勝って引き揚げて来た時、検量室前に多くの騎手が出てきて祝福していたことをよく覚えています。
渡辺 あの時は同期たちも騎乗が終わっても残ってくれていて、検量室前で「胴上げでもしよう」って話になったんです。でも、「さすがにそれはやめてくれ」って(笑)。
▲テイエムオペラオー、アドマイヤベガ、ナリタトップロードがタイトルを分け合った1999年のクラシック (撮影:高橋正和)
――ちょっと見てみたかった気もします(笑)。もしかして、今回もそんな話が出ましたか?
渡辺 さすがに、そこまでじゃなかったです(笑)。でも、うちの厩舎って結構京都と相性がいいんですよね。
――すごい! たしかに、調べてみると46勝のうち20勝を京都で挙げていらっしゃいます。次点は阪神の8勝ですから、飛び抜けて成績がいいですね。
渡辺 近いから使いやすいというのもありますね。
――さて、ヴァルディゼールの今後ですが、距離適性を含めてどうお考えですか?
渡辺 コロンとして胴が詰まり気味の馬体なのでマイルくらいかな、とも思いますが、操縦性はいいので距離は多少延びてもいいんじゃないかなって気はします。ただ、具体的な今後についてはこれから相談していきます。
▲ヴァルディゼールと渡辺調教師 (撮影:大恵陽子)
――厩舎としても2019年を幸先のいいスタートが切れましたね。netkeibaをご覧のみなさんに、最後にメッセージをお願いします。
渡辺 改めて、こうしていっぱい祝福を受けて、応援してもらっている方の多さに気づきました。常日頃、そう思っていないといけないんでしょうが、本当にありがたいですよね。
ジョッキーの時もそうですけど、年明けは1つ勝つまではやっぱり不安です。今年は幸先いいスタートがきれたので、流れに乗ってもっと大きい所も狙いたいと思いますし、勝ち星を増やしていきたいです。僕も徐々にですが、この仕事(調教師業)に慣れてきたかなってところがあるので、また応援していただけたら嬉しいです。
(文中敬称略)