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▲アドマイヤマーズで制した朝日杯FSは「JRA騎手になって良かった勝利」 (C)netkeiba.com


昨年の秋からnetkeibaで連載コラムを担当しているミルコ騎手を直撃。2018年に勝った4つのJRAGIを、じっくりと振り返ります。「JRA騎手になって良かったと思えた」という朝日杯FS、クラシックを強く意識させたサートゥルナーリアなど、2019年のミルコ騎手の活躍を占う上で欠かせない馬たちの手応えはいかに。

(取材・文=編集部)


「こんなにきれいな返し馬が出来る馬はそういない」


――2018年の競馬を総括すると、どんな一年だったでしょうか?

ミルコ うーん、決して悪くはなかった。でも、ベストではなかった年。もちろん、最終的に4つもGIを勝つことができて、年間で153勝の勝ち星をあげることが出来た。

 でも、僕の性格はいつも言ってるけど「もっと勝ちたい、もっとうまくなりたい」。だから、一昨年より去年の方がGIの勝利数が少なかったのは自分にとっては悔しい結果だった。

 だから総括となると、悪くなかったけどベストでないって答えになっちゃうかな。騎手は満足してしまったら、成長が止まると思っているからね。

――今、GIのお話も出ましたが、勝ったGIレースを振り返ってください。

ミルコ まずは大阪杯。スワーヴリチャードは、すごく才能のある馬で、GIを必ず勝てる馬って信じてた。その前の金鯱賞では、休み明けにも関わらず、しぶとい走りをしてくれたし、これなら次はもっと楽しみって思ってた。

 レースは、少し流れが遅くなったんだけど、彼はなんでも出来る馬。だからこそ、外からまくることでペースを変えることを考えた。そのままハナを奪うと後は彼の走りに集中した。

 スワーヴリチャードのデビュー戦は、僕が違う馬に乗って勝ったんだ。その時、庄野先生が悔し泣きをしていたのを見たんだ。新馬でなぜ泣いてるんだろうって不思議に思っていたけど、その理由がその後わかった。これだけの馬。だからこそだったんだって。その悔し涙を流したのと同じコース、競馬場で次は嬉し涙に変えれたことが本当に嬉しかった。

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▲大阪杯は、スワーヴリチャード陣営に届けたい大きな大きな一勝だった (C)netkeiba.com


 そして、少しGIが勝てない月が続いてからのチャンピオンズカップ。初めて乗った時からルヴァンスレーヴはGIを、そして世界を見た馬。だからこそ、前走の南部杯で初めて年上と走り、見せた走りからも信じていた。

 内枠があたった時に、スタートが非常に大事になると思った。対抗になるであろうゴールドドリームがいなくなったことで、マークも厳しくなると思ったから。だからこそ、苦手だったスタートを練習して、出るようにしてくれた陣営の努力には本当に嬉しかった。

 出た後は、ずっと馬と会話を楽しんでいた気がする。直線に入った時に四位さん(ヒラボクラターシュ騎乗)が手前を変えるのが見えた。そして、その時に出来たスペースに入ることが出来た。外からはサンライズソアとインカンテーション が早めに来ていたけど、手応えは十分だったし何も心配はなかった。本当に強い勝利だったと思う。

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▲チャンピオンズCを3歳で制したルヴァンスレーヴは、早くから世界を意識させた馬 (C)netkeiba.com


――12月はGIラッシュでしたね!

ミルコ うん。チャンピオンズカップを勝った勢いを活かせたのが朝日杯フューチュリティステークス。デビューからずっと自分が手綱をとってきたアドマイヤマーズに勝たせてもらったレース。

 彼の特徴はレースセンス。スタートもいいし、道中も自分が何をすべきかが分かってる。そして、何よりもビックリしたのは馬の調子がすごく良かった。本当に友道厩舎の仕上げは唸るものがあった。だからこそ、スタートを出て1番人気のグランアレグリアが早めに出てきたとき、自信を持って彼女の後ろにつけたんだ。

 そして、あの時の馬場からも早めに抜け出すと、後ろから足音が聞こえると更に頑張ってくれた。4戦4勝で、初めて僕だけが手綱を握った馬でのGI勝利だったから、JRA騎手になって良かったと思えた勝利だった。

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▲アドマイヤマーズに騎乗したのはミルコ騎手だけ、そこにも大きな喜びを感じた (C)netkeiba.com


 そして2018年最後のGI、ホープフルステークス。初めてサートゥルナーリアの調教に乗った時、僕が発した言葉は「これは怪物」。そこから一から競馬を教えながら厩舎の人と相談しながらやってきた。

 デビュー戦もその次も、ただただ強いの一言だった。そして、迎えたレースの返し馬で勝利を確信した。こんなにきれいな返し馬が出来る馬は2歳に限らず、そうそういない。なんて言ったらいいのか分からないけど極上の気持ちだった。

 レースでは初めての距離、輸送と不安があったのも確かだけど、それも全く問題にしなかった。彼は歴史を変える一頭だと思う。今年も本当に楽しみな馬だよ。

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▲初めてのコンタクトの時に「これは怪物」と感じたサートゥルナーリア (撮影:下野雄規)


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▲一気に今年のクラシックの主役に躍り出たサートゥルナーリアとミルコ騎手 (撮影:下野雄規)


――新年の決意をお願い致します。

ミルコ 僕個人の決意? 目標? としては去年よりいっぱい勝つこと。それと、乗り始める1月12日の1レースを勝つことが目標。年ごとに考えることはあっても、騎手をしている以上いつでも、もっとうまくなりたい、もっと勝ちたい。それを常に目標にしてる。

 僕はいつでも世界一の騎手になりたい。だから昨日より、1つ前のレースより上手くなっていないと嫌なんだ。そして、去年よりもファンのみんなが喜ぶレースをすることだね。

――特に楽しみにしている馬はいますか?

ミルコ ありがたいことに、沢山のいい馬に乗せてもらっているから選びきれないよ。この馬はこう期待しているし、この馬はこう化けたらとか全ての馬が楽しみ。

 もちろん、GIを勝たせてもらった4頭は今年どうなるんだろうとワクワクしているけど、一頭を選ぶのは難しいよ。だって、すごく可愛い女の子たちに「ミルコさん、好き!」って同時に言われたら、なかなか選べないでしょ(笑)? 一人はセクシー、一人は可愛い、一人は料理が上手とか言う風にね。