一口馬主徹底攻略

▲YGGホースクラブの代表取締役・梁川勝広さん(向かって左)と、YGGオーナーズクラブの代表取締役・福原聡さん


1977年に設立された「荻伏レーシング」から始まった老舗クラブは、2007年のクラブ設立30周年を機に「ブルーインベスターズ」となった。そして今年の4月、「YGGオーナーズクラブ」へとさらなる変化を遂げた。代表馬ブルーコンコルドらを輩出し、牧場とのコネクションを武器に、少数精鋭のこだわりの募集馬をそろえるバイヤー系クラブ。これまでの長い歴史を引き継ぐと同時に、新たな試みにも積極的に取り組んでいる。クラブの変革に迫った。

(取材・文=佐々木祥恵、写真提供:YGGオーナーズクラブ)


古参の会員からの根強い支持も健在


――社名が変わり、新体制になったのはいつでしょうか?

梁川 4月2日です。愛馬会法人の「株式会社ブルーインベスターズ」が「株式会社YGGオーナーズクラブ」に、馬主法人の「株式会社ブルーマネジメント」が「株式会社YGGホースクラブ」に変更しています。

――以前と変わった点を教えてください。

福原 体制が整うまで見合わせていた現2歳馬の募集を前年の12月に開始したのですが、4月2日の社名変更に合わせて一括払い方式の1万口募集というのを打ち出しました。これがまず大きな変更点です。ただ、1万口に関しては社名が変更されたばかりで認知度が今ひとつで売れ行きも厳しかったですし、1万口ですと母数が多いので配当金が少なく、1口を持っているという感覚が薄れてしまいますので、検討を重ねて現在は1000口の募集となっています。

 あとは単純に1000口だと、会員の方も計算しやすくわかりやすいというのもありますね。例えば募集価格が1000万の馬なら1口1万円ですし、1億円の賞金なら控除がなければ10万円となりますからね。 

――ブルー時代からアットホームなクラブという印象がありますが、新体制になってそのあたりはどうですか?

梁川 出資馬が出走したレース後のレクチャーを楽しみにしている会員の方がいらっしゃいますので、引き続き実施しています。以前も行っていましたが、飲食店等での懇親会を積極的に開催するようにしています。また船橋競馬場でも懇親会を実施予定で、これからも会員さんとの距離が近いクラブでありたいと考えています。

 先日も会員番号が一桁の古参の会員さんが事務所を訪ねて来られましたが、何があっても退会せずに応援してくださるそのようなベテランの会員さんの期待にも応えられるようにしていきたいです。 

――新規で入会される方へのオススメポイントはありますか?

福原 以前からの会員さんは他クラブとの掛け持ちの方もいらっしゃるのですが、正直私どものクラブには大手さんのような血統や馬の質は求めてはいなかったと思うんです。私どものクラブに残ってくださっているのは、恐らく大手さんにはないタイプの馬、血統の馬を募集していたからでしょう。

 今は情報社会でネットやSNSで1口の情報を調べられますが、それでも会員でい続けてくださる、あるいは新規で入会してくださるという方は、GIを目指せるような大手クラブさんとは違った魅力を欲しているのかなと感じています。それが血統的なマニアックさであったり、会員さん同士の繋がりであったりとか、パイの大きなクラブにはない距離の近さ、アットホームさがあるのではないかなと思いますので、新規の方にも濃密な1口ライフを味わって頂けると自負しております。

梁川 これはブルー時代からですが、1頭の馬がなるべく数多く走れるようにと考えて、厩舎や牧場と連携しながらやっています。長い休養も少ないですし、愛馬が走っているところを数多く見られるというのもセールスポイントですね。

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▲梁川「愛馬が走っているところを数多く見られます」福原「血統的なマニアックさや会員さん同士の繋がりも」


――なるほど。こう言っては失礼かもしれませんが、マニアックな血統の馬が勝ち上がっていて、条件戦(500万下)や障害などで堅実に長く走る馬がいる印象があります。

梁川 はい、少頭数のわりに勝ち上がっていると思います。来年からはスーパー未勝利がなくなりますし、未勝利戦で9着以下が3回続くとタイムオーバーと同じ扱いになってより厳しくなりますので、1勝するということがこれまで以上に重要になってきますからね。

現在の募集馬は16頭、種牡馬も生産馬牧場もそれぞれ違う


――その新しいシステムに対応できる馬を揃える必要がありそうですが、馬選びについてはいかがでしょうか?

梁川 現在の募集馬は16頭ですが、種牡馬がそれぞれ違いますし、同じ牧場の生産馬もほぼいません。このあたり馬をちゃんと選んでいる、セレクトしているというのが牧場主体ではなくバイヤー系クラブのメリットだと思います。バイヤー系クラブの中では、価格帯も1番安く(平均価格1294万円・2017年産募集馬成績)、マニアックな血統も揃っています。

――高い馬が走るのは当たり前という気もしますが、安くて走る馬を見つけるかというのも醍醐味ですよね?

梁川 選ぶ楽しみというのも確かにあるかもしれないですね。大手さんはカタログを開くと、父も母も兄弟も良血でという馬たちが並びますけど、そうではない馬たちの中から走る馬を探し出す楽しみがあるでしょう

――この父と母の配合だったらどんな馬なのだろうとか、母系を辿ると走る馬を出す血脈だったとか、想像を膨らませる楽しみがありそうですね。その馬を選んでいるのは梁川社長と調教師さん、そして牧場のコネクションが中心となっているとお聞きしましたが、梁川社長の馬選びのポイントを教えてください。

梁川 まず馬全体のバランスですね。1番初めのインスピ―レーションも大事ですし、筋肉の付き方、目付きや顎など顔付きもよく見ています。なるべくコンスタントに出走できるよう故障のリスクの少ない馬ということで、外向、内向も含め、脚が曲がっていないかどうか、前肢、後肢の運び方、地面への着地の仕方、蹄の形などをよく観察して、脚元に欠点が少ない馬を選びます。

 あとは血統背景ですね。どのような意図があって配合されたのか。毛色を含めて、両親はもちろんブラックタイプの中にいるどの馬に似ているのかも想像し、検討材料にしています。

――あわせて調教師や牧場関係者にも馬選びに参加して頂いているわけですね?

梁川 はい。プロである調教師の方々含め、ヤナガワ牧場(会長が叔父、社長が従兄弟にあたる)や幼少時代(父は中央競馬で調教助手の経験があり、北海道門別町で生産牧場に従事していた)から交流のある牧場(下河辺牧場ほか)の方々、あるいは競走馬に関わっている同級生のホースマンなどに、アドバイスや協力をして頂いております。

――新体制になってから、ツイッターやブログなどSNSも積極的に活用している印象がありますが、例えばセリの開催に合わせて、希望の種牡馬のアンケートを取っていましたね?

福原 はい、なかなかご希望通りの種牡馬の産駒を落札をできるとは限らないですが、アンケートで上位にランクインした中ではリアルインパクト産駒を購入できまして、少しですが皆さまのご意見も反映できたと思います。そういう意味で、SNSを使ってこれまで他社が行っていないようなお客様の声の拾い方をして、要望に応えていきたいと考えています。

 クラブにも、直接会員様からの声も電話やメールなどで直接届くこともよくあって、もしかすると弊社なら会員の方の要望に応えてくれるかもしれないという雰囲気もあるのかなと感じますし、すべてとはいかないですが、可能な部分では会員様のご希望や要望にお応えしていければと思っています。

――今後もSNSもどんどん活用をしていく予定ですか?

福原 まだ頭数も少なく、YGGの馬たちが競馬ファンの目に触れる機会はあまりないですし、SNSを使った広告宣伝はとても重要になっていきます。書き込みがあったり、お客様の声もダイレクトに伝わってきますので、これからもどんどん活用していきたいですね。

――カタログやホームページを見るとベーシック会員とライト会員の2種類がありますね。その違いを教えて頂けますか?

福原 ライト会員は最初に一括でお支払い頂ければその後追加のお支払いが一切ないシステムで、最初に馬代と保険料(3年分)、維持費を3年分頂きます。1か月の維持費を60万で計算していて、60万×36か月で2160万円。それを1000口で割ると21600円になります。ただ残念ながら3歳未勝利で引退となってしまうケースもありますよね。そうなると21か月ほどとなり、1000万の維持費しかかかりませんので、出資された方にはおよそ1万円戻ってくる計算になります。

 加えて引退までに稼いだ賞金や出走手当などの配当金が乗って戻ってきます。また長く走って最初に出資した維持費を上回ってしまった時はどうなるのかという質問もよくあるのですが、それまで長く現役でいるということは、必ず1つ勝っていて賞金や出走手当もありますから、配当していない賞金と相殺します。なので基本的には初めにお支払いいただいた金額以上の出費はないということになります。

――月会費は発生しますか?

福原 ライト会員には発生しません。はじめに1口あたり5000円(税抜)の手数料を頂くのですが、これが会費のような形になります。ベーシック会員ですと初回5000円(税抜)のみですので、世代で8口以上持つ場合はベーシック会員になった方がお得なのですが、1口未経験の方や他クラブと掛け持ちでYGGをセカンドクラブにされる方には大変お勧めの仕組みになっております。

――ライト会員がとてもお得に感じますが、それだとベーシック会員の方が不満に感じたりはしませんか?

福原 ライト会員には出資は1頭につき5口までという口数制限を設けています。またライト会員には紙の精算書は送られないですし、引退した時に精算するという形で配当も引退時のみです。また出資馬が優勝した時に、口取り写真はベーシック会員が優先となっており、口取り写真希望者が10人に満たない場合にライト会員の方に順番が回ってくるという形になっています。このようにベーシック会員の方とはサービス面で格差を少しつけてあります。

――新体制になったばかりですが、今後どう展開していきたいなど抱負をお願いします。

福原 動画配信の準備中なのですが、元ジョッキーの方をお招きして、プロならではのお話をして頂く予定となっております。それ以外にも牧場でのミニ見学会の後に、近隣の施設で乗馬体験をして頂いたり、馬のプロを招いての馬の見方講座など、知見を深めて頂いてより1口ライフ、クラブライフを楽しんでいただけるような企画を立てています。

 またツイッターで、リツイートしたらサンクスホースプロジェクトに1円の寄付が行くという企画も既に行っていて、これからも何らかの形で引退馬支援をしていきたいですね。全馬は難しいですが、将来的にはYGGを引退した馬を繋養して、会員の方たちに触れ合っていただいたり、イベントができればとも考えています。

梁川 小規模ならではの柔軟性のある対応ができるのが強味だと思っています。先日も牧場見学ツアーを実施したのですが、参加人数や募集馬も少なめなので、じっくり馬が見られますし、写真もたくさん撮れます。牧場の方の話もゆっくりと聞けますし、会員さんも楽しんで頂けていたようです。

 そのような特徴をさらに充実させて、会員さんに喜んで頂けるようにしていきたいです。もちろん皆さんに納得できる馬選びにも力を入れていきたいと思っています。



【募集馬ピックアップ】

プレシャスラインの2017


一口馬主徹底攻略

(牡、下河辺牧場、父ジャスタウェイ、母父キングカメハメハ)

「ジャスタウェイに体型が似ていて、父の良さを受け継いでいるように思います。名門の下河辺牧場の生産で、母系から桜花賞馬のアユサンが出ていて、血統的にも面白いと思います」(梁川さん)

ブルーベルベットの2017


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(牡、加野牧場、父ゴールドシップ、母父フォーティナイナー)

 近親にJBCスプリント(JpnI)など10勝を挙げたマイネルセレクト、曾祖母に桜花賞、エリザベス女王杯など7勝のハギノトップレディなど。「母系が根強い人気の荻伏牧場の華麗なる一族の血統です。今は小さいですが、兄のブルーハーツクライも年齢を重ねるにつれ体重が増えていったように成長力のある母系だと思います。ゴールドシップとの配合でどのような走りを見せてくれるか、楽しみです」(梁川さん)

トシザユカの2017


一口馬主徹底攻略

(牝、浦河小林牧場、父ダンカーク、母父タイキシャトル)

「ダンカーク産駒は2歳馬が既に11頭(12月2日現在)勝ち上がっていますし、芝ダートともに走れる印象があり、ブレイクの予感がします。本馬も育成場での評価も高く、800万という募集価格は破格ではないでしょうか」(福原さん)

デルマオコマの2017


(牡、サンバマウンテンファーム、父ノボジャック、母父ゴールドアリュール)

「中山のダート1200mで勝ち上がって、堅実に走り続ける姿が目に浮かびますね。ダート戦線での活躍を期待しています。中山のカペラSや交流重賞の東京盃などに勝ってくれる馬になってくれればと思っています」(福原さん)

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