【JBC】シンプルな騎乗に隠れる「馬が走りやすいように走らせる」技術
2018年11月8日(木) 18:01

【JBC】シンプルな騎乗に隠れる「馬が走りやすいように走らせる」技術

哲三の眼!

▲先週の当コラムで注目コンビに挙げていた福永騎手騎乗のケイティブレイブが見事勝利! (C)netkeiba.com

初の中央開催で大きな盛り上がりをみせたJBC競走。スプリントは4番人気グレイスフルリープ、クラシックは3番人気ケイティブレイブ、レディスクラシックは6番人気アンジュデジールが勝利しました。今回はJBCクラシックを中心に、JBC3競走を哲三氏ならではの視線で振り返ります。“あっさり勝った”の中に隠れた勝利ジョッキーの技術とは。(構成:赤見千尋)

たった1つのズレが勝敗を分ける

 まず振り返りたいのはJBCクラシック。先週、注目のコンビとして名前を挙げたケイティブレイブ&福永君が、中団から長くいい脚を使って勝利しました。これまで地方コースでは大きなレースを勝っていたけれど、JRAでは初のタイトル奪取となりましたね。

■11月4日 JBCクラシック(8番:ケイティブレイブ)

 ケイティブレイブにとってはレースの流れをイメージしやすい枠の並びになったかなと思っていて、その中で福永君がどう乗るのか楽しみにしていたのですが、しっかりとスタートを決めて、前がやり合う展開になると中団に下げ、3コーナーくらいからジワッと上がって行って勝ち切りました。

 展開に合わせたレース運びで、シンプルにあっさり勝ったな、という印象がありますが、特にGIの舞台では一つでもズレがあると勝敗に影響してくる中で、たくさんの技術が隠れていたと感じます。

 もともとケイティブレイブは先行馬で、特に逃げた時に良績がありましたが、少しずつそのスピードをコントロールして、中団からでも脚を使えるように育てて来た。これで、逃げてもいいし、番手でも中団からでも競馬ができることを証明しました。3つのパターンがあるというのは大きな強みだし、次のチャンピオンズカップに向けても手ごたえを掴んだのではないでしょうか。

 2着はオメガパフュームと和田君で、まだ3歳馬ながら力のあるところを見せてくれました。もう少し内目の枠だったら、もっと際どい勝負に持ち込めたのでは、と思いますが、その外枠からの競馬の中でもしっかり組み立てて2着に持ってきたのはさすがです。

 3着は1番人気だったサンライズソア&クリストフ。スタートをしっかり決めて、そのまま逃げるのかと驚いた方もいたかもしれませんが、僕はあの形になったら行った方がいいなと思います。

 まず大事なことは、スタートを出して先行争いで存在感を示すこと。スタートが出ないことには他の馬に対して様子見することもできませんから。そういう意味でもクリストフは、1歩目を失敗することはほとんどないんですよね。まずはゲートを出して、周りの騎手に「行くのか?」と思わせるか思わせないかは重要な駆け引きです。

 スプリントでもクリストフは魅せてくれました。グレイスフルリープは地方コースで良績がありましたが、中央のスピードが必要なダートではどうだろうという印象の中、スタートしてからしっかりとスピードに乗せ、好位からマテラスカイを差し切った。

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▲8歳馬グレイスフルリープがルメール騎手のエスコートで鮮やかな差し切り勝ち (C)netkeiba.com


 レースを振り返ると、クリストフが特別に何かしているようには見えないけれど、本当に何もしていないわけではないんです。僕がいつも言う『馬にとっての走りやすい走り』をするために、いろいろなことを馬に伝えている。そこに技術の高さを感じるし、結果として4番人気の馬をすんなり勝たせた。これで4週連続GI制覇ですからさすがですよね。

 レディスクラシックは6番人気アンジュデジールがアタマ差で勝利。

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▲横山騎手の好騎乗で6番人気アンジュデジールが勝利 (C)netkeiba.com


 8枠16番からスタートをしっかり決めて内に潜り込んでいくんですから、やっぱり典さんはさすがだなと。してやったりのレースだったのではないでしょうか。ここでもスタートを決めたことがまず大きなポイントだったので、ダートの祭典のJBCで、改めてスタートの大切さを実感しました。それは芝のレースも同じなので、まだまだ続くGI戦線でも注目していきたいです。

今週の注目コンビ

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▲エリザベス女王杯連覇を狙う同コンビ (C)netkeiba.com


 今週の注目騎手はモズカッチャン騎乗のミルコです。

 秋のGIは少し悔しい結果だと思いますがこの馬でエリザベス女王杯2連覇、応援したいと思います。

(文中敬称略)

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