二度の牝馬三冠を達成 関東を代表する名伯楽・国枝栄調教師 (撮影:佐々木祥恵)

▲ 二度の牝馬三冠を達成 関東を代表する名伯楽・国枝栄調教師 (撮影:佐々木祥恵)

今回からスタートする新企画。「今週のFace」はジョッキーや調教師など、いま最も旬な人を直撃するインタビューコーナーです。

第1回目のゲストは国枝栄調教師。異次元の末脚で秋華賞を制したアーモンドアイで、アパパネに次ぐ厩舎2頭目の牝馬三冠を達成。「さすがに緊張した」という三冠達成の瞬間、心配されたレース後のアーモンドアイの状態、アパパネとの違いなど、関東を代表する名伯楽が胸の内を明かします。

(取材・文:佐々木祥恵)

4コーナーを回った時には「大丈夫かな?」と不安も

――アーモンドアイの秋華賞優勝、そして牝馬三冠達成おめでとうございます。三冠達成の瞬間のお気持ちをお聞かせください。

国枝 やはり少し緊張はあったかなと思いますし、正直、ホッとしましたね。

異次元の末脚で秋華賞を制したアーモンドアイ、偉業達成に指揮官も胸をなでおろした (C)netkeiba.com

▲ 異次元の末脚で秋華賞を制したアーモンドアイ、偉業達成に指揮官も胸をなでおろした (C)netkeiba.com


――今回はテンションがかなり高かったようですが?

国枝 オークスの時は装鞍所は大人しくてパドックがうるさかったのですが、今回は逆で装鞍所がうるさくてパドックではそうでもなかったですね。だいぶ気持ちがこもっていたのは確かだと思います。

――馬場入り時も少してこずったような場面も見受けられましたが?

国枝 多くの馬がそうなんですけど、走り出す前にちょっと身構えるところがありますよね。

――それでもレースでは落ち着いて走っていましたね?

国枝 スタートしてしまえば全く問題なかったですし、折り合いも良かったです。

――道中の位置取りは中団よりも少し後ろでした。

国枝 そうですね。スタートもこの馬としては普通だったと思います。

――縦長のわりにはあまりペースが上がっていないように見えましたが?

国枝 逃げたミッキーチャームはとても良いペースの競馬ができていて、2番手、3番手の馬が動かなかったですからね。

――そのあたり見ていていかがでしたか?

国枝 正面スタンド前では自分が予想していたような並びになっていましたので、これは良いなと見ていました。ただ全体にペースが上がっていけばその後ろについていくだけで良かったのですが、案外落ちついた流れになってしまったので、外を回らざるを得なくなりました。

――4コーナーでは大外を回ってきました。

国枝 実際勝負どころからの動きが少し悪くて、4コーナーを回った時には前ともだいぶ差があったので、その時は大丈夫かな? と不安がよぎりました。でも直線ではいつもの脚を披露してくれました。

――直線半ば過ぎあたりからの加速がものすごかったです。

国枝 そうですね。今回は手前を替えたのは1回だけだったのですが、替えた瞬間にグンと加速しました。これはすごいなと…。

レース後に心配されたことはすべて払拭

――アパパネが牝馬三冠を達成していますので、国枝厩舎では2頭目の牝馬三冠ですね。

国枝 アパパネは二冠を取っていましたけど、他の馬とのレベルの差はさほどないのではないかという印象がありました。太めだったこともあって前哨戦を使いましたし、体を絞らなければならないなど、実際気を遣う面がありました。今回のアーモンドアイは、他の馬との実力差がアパパネの時以上にあるように思いましたので、普通にしていれば大丈夫という感じでしたね。

2010年に牝馬三冠を達成した厩舎の先輩・アパパネ (C)netkeiba.com

▲ 2010年に牝馬三冠を達成した厩舎の先輩・アパパネ (C)netkeiba.com


――ルメール騎手は元々のレベルが高い馬と評していましたが、夏を越してさらに変わってきたところは?

国枝 追突というのですが、走る時に後ろ脚で前脚をぶつけるところが出てきました。ただこれは筋力がついてきて以前より馬の動きがすごくなってきたから、余計に後ろ脚が前に届き過ぎちゃうというのもあるんですね。

――ところでレース後、馬がフラフラしたという報道もあって、状態が心配されましたが?

国枝 上がってきた時の息遣いは全く楽ですごいなと周りとも話をしていたのですけど、徐々に動きが悪くなってきて、熱中症のような症状でヒヤッとしました。治療や手当をしたら症状はすべて収まりました。恐らく血流というのか循環が悪くなって体内に熱がこもってしまったのかなと思います。脚元や他の部分は問題ありません。

アーモンドアイの快挙に、シルクの会員の皆さんも笑顔で記念撮影 (C)netkeiba.com

▲ アーモンドアイの快挙に、シルクの会員の皆さんも笑顔で記念撮影 (C)netkeiba.com


――それは良かったです。この後の予定も決まっているのですか?

国枝 ジャパンCという話は出ていますけど、出走するかどうかは馬の具合を見ながらということになりますね。10月18日にノーザンファーム天栄に放牧に出ましたが、ジャパンCに行くというのであれば、それに間に合うように帰厩することになります。

――あくまで状態をよく見極めてということですね。

国枝 そうですね。このまま順調に行けば、これからも相当な活躍ができると思いますからね。