「3世代ダービー馬の豪華競演」から一転、ワグネリアンが回避を表明。同じく3歳馬のダノンプレミアムや、牝馬のディアドラも回避。古馬による激戦の様相を呈してきました。上位人気のスワーヴリチャードやレイデオロの実力はさることながら、他の馬たちにも十分チャンスあり。そこで、競馬専門紙「馬サブロー」の記者4名で緊急座談会を開催。「今回は過去にない特殊な天皇賞になる!」そう言い切ったわけとは。(取材・文:編集部)

馬サブロー

▲(左から)馬サブローの竹村浩行(栗東)、吉田順一(栗東)、加藤剛史(美浦)、妹尾和也(編集部)


【出演者】


◆竹村浩行(栗東)
本命戦は確実に。ひたすら的中を追い求め、年間トータル馬単回収率100%超え。厩舎班を約10年経験し、07年に調教班へ。グリーンchでトラックマンTVなどに出演中。

◆吉田順一(栗東)
関西2、3歳本紙予想を担当。パドックを見続けてかれこれ20年。馬の適性と能力を見極めるために奮闘。ラジオ関西解説者。

◆加藤剛史(美浦)
パドック最前列で馬の能力、適性を探り出し感性で勝負。高配当を狙い撃つ、異質な本紙予想。

◆妹尾和也(編集部)
全レース全力投球がモットーで、馬三郎きっての馬券好きを自任。未勝利、500万など下級条件の攻略は自信あり!

【テーマ(1)】『ワグネリアン、ダノンプレミアム、ディアドラの回避』

加藤 ワグネリアンとダノンプレミアムも回避。出てきたらディアドラが本命だったんだけど、ここはパスして香港に直行という話なので。

吉田 ディアドラは、この前の府中牝馬Sが1分44秒7で、上がりが32秒3。ハービンジャー産駒ながらすごいよね。

ディアドラ

▲府中牝馬Sを驚異のタイムで制したディアドラ (撮影:下野雄規)


加藤 ディアドラはすごいよ。馬がめちゃくちゃ変わってますもん。まあ、馬券は3歳を厚くするつもりだったので…ダノンがいないのが一番痛い。

吉田 僕も、ダノンが出てきたら本命にしようと思ってました。だから回避は痛いけど、あれはもうしょうがない。オーラが急になくなってしまいましたもん。ずっと見てて、「あっ、ダノン来た!」ってひと目でわかったんです。それがここ2、3週前くらいかな、ダノンだって気が付かないくらいオーラがなくなって、「あぁ、これはアカンのかな」って。ここで無理しないあたり、中内田厩舎はやっぱり大事に使いますね。

竹村 ダノンがまともな状態で出てきたら、みんな買いたかったよな。ワグネリアンは、見ててそんなに悪い感じはしなかったんだけどね。友道厩舎はマカヒキの時もそうだったけど、ダービーは攻めに攻め抜いた鬼気迫るぐらいの仕上げをしてた。それで見事に勝ったわけだけど、その分、微妙に疲れが抜け切れなかったんじゃないかな。ところで、レイデオロもアクシデントがあったけど、どうなの?

加藤 あれはただ躓いて、1週前の調教を強くやれなかったっていうだけで。そもそも、強くやる気もなかったと思いますけどね。あの馬の場合、藤沢厩舎はそれほど攻めないで来ているから。攻めちゃうとどうしても行きたがるところが出ちゃうので。だから今回のことは、特別マイナスに捉えなくていいかなと思ってます。

竹村 上がり目はあると思っていいの?

加藤 いいと思います。その次の日も坂路乗ったし、金曜もコース入ったし。日曜には時計出しましたからね。馬自体、ようやく良くなってきたと思います。

レイデオロ

▲心配されたレイデオロは、翌日もトレセンで元気な姿を見せた (10月18日撮影、佐々木祥恵)


【テーマ(2)】『逃げ馬不在のメンバー構成、はたして展開は?』

加藤 展開は速くはならないでしょう。ドスローでしょうね。

妹尾 一番大事なのは何が行くか。僕は、キセキが行ったら面白いなと思いますけど、今までの過程があるので、ここで逃げるっていうのはなかなか出来ないですよね。

竹村 となると、ダンビュライトとかが行くんじゃない?

妹尾 そうなりますよね。それか、スタートの良さと前に行くってなるとアルアインとか。アルアインはスタートも速いですし。

加藤 だったらやっぱり、ドスローだよね。ダノンが逃げれば締まったのになぁ。

竹村 ダンビュライトもミッキーロケットも上がりの速い展開にはしたくないだろうけど、引っぱる馬もいないし、やはり決め手勝負になってしまうのかな?

妹尾 スワーヴリチャードがどんな感じで動くかにもよりますかね。

加藤剛史と妹尾和也

▲妹尾「スタートの良さと前ってなるとアルアインか」加藤「ダノンが逃げれば締まったのになぁ」


【テーマ(3)】『スワーヴリチャードとレイデオロ 人気2頭の評価』

竹村 今回はスワーヴとレイデオロが1、2番人気になりそうだね。

吉田 スワーヴのデムーロ騎手は、菊花賞2着の悔しさがあるからね。2000mの左回りなんて条件的にはぴったりだし、今回は特に力が入ってるんじゃない?

スワーヴリチャード

▲大阪杯でGIウイナーとなったスワーヴリチャード (C)netkeiba.com


加藤 スワーヴって、台風か何かでトレセンに戻ってくるのが遅れたんでしょ?
吉田 はい。その辺で順調かっていうと、やや微妙な感じはするんだけど。

竹村 仕上げ的にも、まだ少し余裕があるもんな。ただ、脚力は本当にすごい。たぶん栗東で一番あるんじゃない? 先週もCウッドで楽々78秒台とか出してたからね。

吉田 心肺機能は相当高いですよね。長くいい脚が使えるんでしょうね。

竹村 ただ、1週前は手前を変えてなかったけど(苦笑)。だから、生粋のサウスポー。

吉田 それだけに、大阪杯は上手くいったっていうことでしょうね。みんなが動かないところをスッと動けて、3コーナーからはラチ頼り。馬の持ち味を活かせた競馬でしたね。

竹村 ただ、あの安田記念の3着というのがなぁ…。ちょっと腑に落ちないよね。初めてのマイルとはいえ、あの形で勝てないというのは。

吉田 33秒9の脚を使って負けてるから、単純に爆発力とか切れ味が、勝ったモズアスコットの方が上だったってことじゃないですか?

竹村 いや、まぁ、そうなんだけども…。立ち回り見てたら、普通は勝つパターン。マイルでの切れ味が足りなかったのかな。そう考えたら、ここを勝つのか!?

吉田 ポンっと出て前で主導権を握って、ペースをちょっと速めていったら、一番強いですよね。

竹村 ただ、スワーヴはぶっつけになるし、そういう意味ではレイデオロの方が一歩リードしてるかもしれないな。

妹尾 スワーヴとレイデオロだったら、僕はレイデオロを買いたいです。スローだとしたら、2ハロンくらいの爆発力は断然。たぶんメンバーで一番だと思います。

竹村 前走のオールカマーなんて、アルアインの勝ちパターンだったけど、アルアインめがけて行ったガンコやエアアンセムは並ぶところまでも行けなかったのに、レイデオロは差し切ったからね。しかも、坂の途中で加速してるし、やっぱりすごいなって思ったわ。

レイデオロ

▲オールカマーを快勝し、ダービー馬の威厳を見せたレイデオロ (撮影:下野雄規)


【テーマ(4)】『馬券で一番買いたい注目馬』


吉田 人気はこの2頭ですけど、他の馬がつけいる隙はありますよね。

竹村 うん。だから、馬券的には面白い一戦になったと思う。僕はヴィブロスが注目だな。

加藤 前走、宝塚記念の敗因は何だと思いますか?

竹村 前回は前半からかなり力んじゃったからね。ただ、2コーナー過ぎまで力んだにもかかわらず、それでも最後まで脚は続いてた。それにやっぱり、この馬は左回りの方が絶対にいい。今までドバイターフも含めて連対をはずしたことないし、終いも左回りの方が絶対に切れると思う。で、みんなが言うスローの決め手勝負になるんだったら、なおさら面白い。

吉田 僕はアルアインですね。池江厩舎はCWと坂路のバランスがいいからなのか、自然と2000mあたりで強い馬が多い。いろんな競馬場の2000mの重賞を勝っていますしね。

竹村 アルアインは特に2000mなんじゃない? ただ、スローの決め手勝負になったら、差されそうな懸念もあるけど。

吉田 そうですね。だから、勝つとまでは言えなくても着を拾うような感じで、馬券の軸として考えたい。もう一頭気になるのがマカヒキなんですよね。良くなってる気がする。

加藤 うん。僕もマカヒキでいきます。マカヒキはすごく良くなってる。それこそ、先週の追い切りが良かったよね。

竹村 良かった。去年の秋なんて、動きはあまり目立たなかったもんね。ダービーの時はさすがにすごかったからそのイメージが残っていて。先週久しぶりに「マカヒキらしい迫力が戻ってきたな」と思った。追ってからもズバッと伸びたし。しかも、マカヒキこそ2000mの馬でしょ。

妹尾 2000mですね、絶対的に。

吉田 札幌記念は勝ってたら良かったけどね。ただ、だいぶレースに対して前向きさが出てきたのはプラスと捉えたい。

マカヒキ

▲札幌記念出走時のマカヒキ、2着ながら良化が見えるという (撮影:高橋正和)


竹村 サングレーザーには負けたけど、サングレーザーが内々を立ち回ったのに対して、マカヒキは大外を回ってたしね。

妹尾 僕は、サングレーザーの方が気になってるんですけど。

竹村 そうなの。理由は?

妹尾 ここが目標の仕上げなのかは微妙ですけど、スロー見込みで考えると、メンバーを考えても内で馬群の中でじっとしてという競馬をすると思うんです。で、そこからの瞬発力勝負っていうか、速い馬場だったら抜けてきてもいいのかなって。札幌記念も形としてはマカヒキよりも楽で、馬群で運んでいましたけど、4コーナーまでずっと持ったままだったので、距離自体も大丈夫なのかなと思います。

吉田 札幌の稍重の2000mを勝つんだからな。それよりは、今回ははるかにいい条件なような気はする。

竹村 あとは、人気どころで名前が挙がってないのは…キセキか。

吉田 この前の毎日王冠、「こんな走りできるんだ」って思いました。この3着はよく頑張ってますよね。ただ今年から併せ馬をしてないから、そこが不安。

竹村 いや、だからうるさくないんだよ。

吉田 うるさくはないけど、また出来るようになればなって。

竹村 これで結果が出たから、もう当分やらないかもね。むしろ良い傾向なんじゃない? 去年の香港の後から、動きはあんまり目立ってなかったけど、先週は反応が良かった。状態は上向いてると思う。

吉田 菊花賞であんなきついボロボロの馬場を走って、さらに海外遠征で、精神的にきつかったんでしょうね。ここで1回立て直してほしい。ルーラーシップだから、もうひと化けあるかもしれないし。

妹尾 はい。ただ、今はまだ100ではない。

竹村 うん、100ではない。もう1つ2つギアは持ってるはずだから、先を見据えての期待かな。

竹村浩行と吉田順一

▲竹村「キセキの状態は上向いてると思う」吉田「ルーラーシップだからもうひと化けあるかも」


【テーマ(5)】『重要ファクターの枠順、各陣営の狙いは?』


吉田 枠を考えるとスワーヴは、あんまり内だと嫌ですよね。ゲート次第だから。一番嫌なのは閉じ込められることで。

妹尾 2000mでスローだと、そうですね。

竹村 むしろ、外の方がいいかもしれない。踏んで行きたいタイプだし。

加藤 マカヒキはどこでもいいでしょうね。

吉田 うん。気分良く走れればいいんでしょう。

竹村 キセキもどの辺でもいいんじゃない?

吉田 そうですね。行き脚良く行けるなら、内から行った方がいいんでしょうけど、外でも馬的には何も問題ないですね。内がほしいってなると、ヴィブロスは内がいいですよね。我慢していかないといけないから。

竹村 ヴィブロスは絶対内。前に壁を作って脚をためたいからね。前走のこともあるし、外だと嫌だな。

妹尾 サングレーザーも内。2枠か3枠あたりでしょうか。そこを引かなかったら、ちょっと厳しいかなって思います。

加藤 レイデオロも、外に入ったら厳しいでしょうね。

吉田 うん。ただ内でも、周りによって枠の並びで出れる出れないはあるから。スタートの脚はそんなに速くないからね。

竹村 外でも大丈夫なのはスワーヴとマカヒキ。逆に外に入ってほしくないのがヴィブロスとサングレーザーあたりか。

吉田 天気はどうなの?

妹尾 土曜がちょっと雨予報ですが、ほぼ良馬場だと思います。なので、上がりは結構速くなるんじゃないかなと。ディアドラが府中牝馬Sで32秒3でした。普通のところでも、33秒そこそこ出てると考えると。

吉田 そこまでハイペースにならないんだったら、33秒くらいの脚はいるのかもしれないね。

竹村 Bコースに変わるし、内も外も絶好の馬場。

妹尾 勝ち時計が1分58秒後半、勝ち馬は上がり32秒台を使ってくるイメージです。

竹村 32秒台!? 過去10年の結果を見たら、カンパニーまで遡らないとないよ。

妹尾 そうなんですけど、この13頭立てでスロー見込みっていう競馬は、過去にほぼほぼないんですよね。なので今回はちょっと、特殊な天皇賞になると思います。

妹尾和也

▲妹尾「13頭立てでスロー見込みっていう競馬は、過去にほぼほぼない」


【最終決断】

竹村 ヴィブロス、レイデオロ
吉田 アルアイン、マカヒキ
加藤 マカヒキ、レイデオロ
妹尾 サングレーザー、レイデオロ

(誰もスワーヴリチャードを入れてないやん!! なんか、スワーヴな気がしてきた……。BY:竹村)